2026.09.01
遺言書は、財産の多い人だけが作るものではありません。
遺言書の基本や必要性、遺産分割との関係、家族が相続で揉めないために元気なうちから考えておきたいことについて書きます。
家族の相続トラブルを防ぐために、元気なうちから考えておきたいこと
遺言書というと、「財産がたくさんある人が作るもの」「高齢になってから準備するもの」と考えられがちですが
財産の多い少ないだけで必要性が決まるものではありません。
むしろ、残された家族が遺産の分け方で悩んだり、争ったりすることを防ぐための大切な準備の一つです。
今回は、遺言書の基本から、どのような方が遺言書を検討したほうがよいのか、遺言書を作るときに考えておきたいことについて解説します。
遺言書とは?
遺言書とは、自分が亡くなった後の財産の分け方などについて、自分の意思を残しておくためのものです。
例えば、
◆自宅は長男に残したい
◆お世話になった人に財産を贈りたい
◆特定の財産を特定の方に引き継いでほしい
といった希望を伝えることができます。
遺言書がない場合、相続が発生すると、原則として相続人同士で遺産の分け方を話し合うことになります。
これを「遺産分割協議」といいます。
遺言書がなければ、亡くなった方ではなく、残された相続人が財産の分け方を決めることになるのです。
自分が亡くなった後のことは、家族で仲良く決めればいい?
果たしてそうでしょうか?
たとえば、相続財産のほとんどが自宅だったとします。
長男がその家に住んでいて、次男は遠方に住んでいる。
生前は、「家は長男がそのまま住めばいい」と家族みんなが思っていたとしても、
実際に相続が始まると、それぞれの生活事情や考え方が変わっていることがあります。
「自分は何ももらっていない」
「親の面倒を見てきたのだから、多くもらいたい」
「昔から兄ばかり優遇されていた」
こうした思いが重なると、財産の金額だけでは解決できない問題になってしまうことがあります。
「仲のいい家族だから、相続争いは起こらない」—この言葉の信頼度は何%でしょう・・・
遺言書を作っておいたほうがよい人
特に次のような方は、遺言書の作成を検討することをおすすめします。
① 子ども同士で財産の分け方を決めるのが難しそうな方
子どもが複数いる場合、それぞれの家庭や生活状況によって、財産に対する考え方が異なることがあります。
あらかじめ自分の意思を残しておくことで、相続人が話し合う際の負担を減らせる可能性があります。
② 自宅など、分けにくい財産を持っている方
現金や預貯金は比較的分けやすい一方、自宅や土地などの不動産は簡単に分けることができません。
「誰がその不動産を引き継ぐのか」をあらかじめ考えておくことは、相続対策として重要です。
③ 特定の相続人に多く財産を残したい方
「長年、自分の面倒を見てくれた子に多く残したい」
「事業を継ぐ子に会社や事業用資産を引き継いでほしい」
など、財産を特定の人に多く残したい場合には、遺言書を検討する必要があります。
④ 相続人以外の人にも財産を残したい方
たとえば、お世話になった方や、法定相続人にならない親族などに財産を残したい場合です。
相続人以外の人に財産を渡したい場合には、遺言書を作成しておくことが重要になります。
⑤ 家族に相続手続きの負担をかけたくない方
相続が発生すると、財産の調査や遺産分割協議、各種名義変更など、残された家族にはさまざまな手続きが発生します。
遺言書を準備しておくことは、こうした家族の負担を減らすことにもつながります。
遺言書があれば、相続トラブルはなくなる?
「遺言書を作れば絶対に相続でもめない」というわけではありません。
遺言書の内容によっては、相続人の間で争いになる可能性もあります。
また、一定の相続人には「遺留分」という権利が認められています。
財産の内容や家族構成によっては、遺言書の内容について、税理士の他、司法書士や弁護士などの専門家に相談したほうがよいケースもあります。
遺言書の種類
一般的に利用される遺言書には、主に次のような種類があります。
自筆証書遺言
本人が自筆で作成する遺言書です。
比較的手軽に作成できる一方、法律で定められた方式を守る必要があります。
現在は、法務局による「自筆証書遺言書保管制度」もあります。
公正証書遺言
公証人が関与して作成する遺言書です。
作成には一定の手続きや費用が必要になりますが、遺言書の内容や形式について公証人の関与を受けられるため、
より確実に遺言を残したい場合に検討されます。
遺言書の第一歩「財産の整理」
遺言書を作ろうと思ったら、自分が所有している財産を整理することから始めましょう。
預貯金
不動産
株式・投資信託
生命保険
自動車
貴金属
借入金
その他の財産
「自分では分かっているから大丈夫」と思っていても、家族からすると、
「どこの銀行に口座があるのか分からない」
「証券会社が分からない」
「不動産をいくつ持っているのか分からない」
というケースが多々あります。
財産を一覧にしておくだけでも、残された家族の負担を大きく減らせる場合があります。
まずは「エンディングノート」を作成してみるのも良いでしょう。
遺言書だけでなく、家族とのコミュニケーションも大切
遺言書を作ることは大切ですが、それだけですべて解決するわけではありません。
できれば、元気なうちに家族と少しずつ話しておくことも大切です。
たとえば、
「この財産はこうしてほしいと思っている」
「銀行や保険の資料はここにまとめてあるよ」
といった話です。
相続の話は、「死」を連想するため、家族に切り出しにくいものです。
突然「遺言書を書いたから」と話すのではなく、日常の会話の中で少しずつ伝えていく方がより気軽に考えられると思います。
遺言書は「死ぬための準備」ではありません
「まだ元気だから、遺言書は必要ない」そう思う気持ちは自然なことです。
しかし、遺言書は「死ぬための準備」ではなく、自分が元気なうちに、自分の意思と財産を整理しておくための準備です。
家族に伝えたいこと。家族に困ってほしくないこと。
これまでの人生や家族との関係を振り返り、遺言書を作ることで、自分の意思を家族に残すことができます。
まとめ|遺言書は家族への思いやりの一つ
遺言書は、財産が多い人だけが作るものではありません。
「自分が亡くなった後、家族やお世話になった方にどうあってほしいか」という希望を残すため、誰しも、遺言書について考えてみるべきだと思います。
また、遺言書を作ることをきっかけに、財産の整理や家族との話し合いを始めることもできます。
遺言は15歳からすることができます。
「まだ早い」と思っている今こそ、一度、ご自身の財産と家族について考えてみてはいかがでしょうか。
やれるうちに、やっておく。
それが、残される家族への一つの思いやりになるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。


